道善敏則さんの早逝を悼む

2014年12月
松井彰彦

日本経済新聞社編集委員の道善敏則さんが、長きにわたる闘病生活の末、55歳の若さで亡くなった。ぼくが1998年2月17日付けの日経新聞の経済教室で初めて論考を載せていただいたときの担当が道善さんだった。「経済学の最前線」という特集で「『規範』の分析」というタイトルを付けていただいた。
原稿に対して、非常に誠実かつ厳しい方だったことを記憶している。その記者魂を垣間見たのが、2004年2月16日付けの経済教室の論考だった。改正独禁法についてとりあげたのだが、いくつかの数字を出したところ、その算出根拠を求められ、あわててあちこちに散らばっていたデータを集めて提出した。もう少し根拠がほしいと言われ、最後はぼくが出した数字の根拠を確かめるために、他所に確認の電話もかけていたように思う。最後に「よくわかりました」と言われたときは、ほっと胸をなでおろした。
その後、ぼくは日経新聞を含め、各紙で執筆させていただく機会に恵まれたが、もし多少なりとも評価していただいているとすれば、それは道善さんの関西弁でのフレンドリーだが厳しい指導の賜物である。ある記者の方が自分も道善さんの背中を見ながら成長したと言っておられた。経済教室を担当する日経・経済解説部は、今でも道善さんがぼくを育ててくれたように、新しい執筆者を育てているのであろうか。
最後に提案された企画が現在連載中の「やさしいこころと経済学」だったという。私も経済解説部からお話をいただき、最終章を書かせていただくことにした(執筆時点の情報)。道善さんへの手向けとなればと思い、拙くとも誠実な原稿を書くことを心がけた。謹んでご冥福をお祈りしたい。

©松井彰彦。無断転載等を禁ずる。